はじめに
この記事では、血統に秘められたポテンシャルを引き出した種牡馬・ブライアンズタイムの功績について解説します。彼が日本に輸入されるまでの経緯や、繋養先の変遷、彼によって生み出された名馬たち、血統背景、競走成績の特徴、さらには後継種牡馬候補まで、幅広い内容をお届けします。
ブライアンズタイム(Brian’s Time)- netkeiba
ブライアンズタイムとは
ブライアンズタイムは1985年生まれの米国の競走馬で、カルフォルニア州で生まれました。彼の父はロベルト、母はケリーズデイ、母父はグロースタークです。競走馬時代には、1988年のフロリダダービーやペガサスハンデキャップで勝利しましたが、クラシック戦線での活躍はリズンスターなどに敗れる結果となりました。
日本での種牡馬時代
競走馬を引退後、1991年に日本に輸入されました。繋養先は最初早田牧場でしたが、後にアロースタッドに移りました。最も著名な産駒として、ナリタブライアンやチョウカイキャロル、マヤノトップガンなどが中央競馬で活躍しました。そして地方競馬においても「栃木の怪物」と呼ばれたブライアンズロマン(63戦43勝!)、岩手のトーホウエンペラー(東京大賞典など)が挙げられます。
ブライアンズタイムの血統は、中央・地方の競馬で大きな注目を集めました。リーディングサイアー3位以内を11年連続で維持し、多くの活躍馬を生み出しました。
同年代で活躍したサンデーサイレンス、トニービンをあわせた輸入種牡馬3強時代は、日本競馬が特に発展した時代でした。これらの輸入種牡馬が日本競馬をより高いレベルに導き、海外での日本調教馬の活躍につながりました。
繋養先の変遷
ブライアンズタイムの繋養先は、早田牧場からアロースタッドに移り、早田牧場の破産によってジェイエスが運営を引き継いだブライアンズタイム会で管理されました。2013年に骨折して安楽死されるまで、息の長い種牡馬としてのキャリアを過ごしました。
彼の血統は中央競馬でも引き続き活躍しており、後継種牡馬として、タイムパラドックスやノーリーズン、フリオーソなどが名前が挙げられています。
主な産駒
ブライアンズタイムは、1991年から2021年までの間に多くの著名な産駒を送り出しました。その中でも、GI級競走や重賞性優勝馬が輩出されました。
ナリタブライアン
ナリタブライアンは、ブライアンズタイム産駒の中でも最も有名な馬です。1994年の皐月賞・日本ダービー・菊花賞を制した三冠馬です。白いシャドーロールを装着していたことも有名ですね。走っている自分の影を怖がったため、シャドーロールを装着したと言われています。三冠馬となった後、同年の有馬記念を圧倒的な1番人気で制しました。中長距離馬としては異例のスプリントG1である高松宮記念にも出走したこともあります。
このナリタブライアンは類まれな素質により競馬界に衝撃を与え、ブライアンズタイムの存在を確固たるものとしました。
ナリタブライアンは引退後に種牡馬入りしましたが、残念ながら1998年に死亡します。残した産駒は2世代のみ、重賞を勝つ馬を輩出することはできませんでした。
チョウカイキャロル、ブライアンズロマン、トーホウエンペラー
チョウカイキャロルもブライアンズタイムの優秀な産駒の一つで、1994年のオークスを制覇しました。
ブライアンズロマンは、今はなき宇都宮競馬で活躍した競走馬で、63戦43勝のうち重賞は17勝でした。晩年には中央競馬にも挑戦し、9歳にしてオールカマーに出走しています。
トーホウエンペラーは東京大賞典やマイルチャンピオンシップ南部杯などを勝った岩手の英雄です。彼はNAR代表馬にも選出された経験があります。
ブライアンズタイムの血統背景
ブライアンズタイムの血統には、父ロベルトと母ケリーズデイが強く影響しています。
父ロベルト
父ロベルトは、米国の名種牡馬として知られ、エクリプス賞最優秀種牡馬に選ばれた経験もあります。キャリアの中で21戦5勝という成績を残して引退し、その後、種牡馬としても成功を収めました。ロベルトの血統は、ヘイルトゥリーズン・ナスルーラ・セントサイモン・フェアウェイといった4系統に遡ることができます。
ヘイルトゥリーズンは、ブライアンズタイムともう1系統を確立させた種牡馬であり、ロベルトが親系統に昇格したとされています。また、ブライアンズタイムは、父のロベルトと母のケリーズデイのもとに生まれました。
母ケリーズデイ
母ケリーズデイは、ブライアンズタイムの母としてだけではなく、その後の競走馬や種牡馬の母としても非常に成功している馬で、彼女の血統は、リーディングブルードメアサイアーランキングでも高い評価を受けています。
ケリーズデイの父は名種牡馬グロースタークです。グロースタークはブルードメアサイアーとして活躍した種牡馬で、イギリスやアメリカでリーディングブルードメアサイアーに輝いた実績があります。
ブライアンズタイム産駒の競走成績
ブライアンズタイム産駒の競走成績から見えてくる特徴は、2歳戦から春のクラシック戦線で活躍し、ダートでも強い馬が多いことです。また、高齢になっても活躍する馬がいる一方で、芝ではピークを過ぎると成績が落ちる馬もいます。
2歳戦から春のクラシック戦線で活躍
ブライアンズタイム産駒は、早期から活躍が期待される傾向があります。それは2歳戦から春のクラシック戦線での活躍が目立つためです。このことからも、彼の血統が持つ才能の素早い開花がうかがえます。
特に、ナリタブライアンやマヤノトップガン、チョウカイキャロルなどは、この傾向が顕著に表れています。彼らは2歳時から活躍し、その後の春のクラシック戦線でも大活躍しました。
ダートでも強い
ブライアンズタイム産駒のもう一つの特徴は、ダート競走での強さです。特に彼自身がアメリカのダート中距離路線で活躍していたことからも、その血統的な根拠がうかがえます。
彼の血統は、芝や砂のどちらのコースでも活躍できる万能性を持っています。これは、彼の父ロベルトや母ケリーズデイの血統に由来するものと考えられます。
マヤノトップガンは当初ダートで使われて勝ち上がりをしています。ブライアンズタイム産駒は前述の通り地方競馬でも活躍した競走馬が見られることからも、ブライアンズタイム産駒の守備範囲の広さが分かります。
まとめ
ブライアンズタイムは、競走馬としての活躍のみならず、種牡馬としても非常に成功した馬でした。彼の産駒は、2歳戦から春のクラシック戦線にかけて活躍し、ダートでも強い傾向があります。また、彼の血統背景からは、ヘイルトゥリーズン、ナスルーラ、セントサイモン、フェアウェイの系統が引き継がれています。
これらのことから、ブライアンズタイムは、血統に秘められたポテンシャルを引き出し、日本の競馬界に大きな影響を与えた名牡馬として語り継がれるでしょう。また、その後継種牡馬や、これから誕生する彼の産駒たちからも、引き続き血統の素晴らしさを証明する活躍が期待されます。