はじめに
トウカイテイオーは、日本の競走馬であり、七冠馬シンボリルドルフの初年度産駒の一頭である。彼は1991年度JRA賞年度代表馬、最優秀4歳牡馬および最優秀父内国産馬、1993年度JRA賞特別賞受賞の栄誉に輝きました。彼の主な勝ち鞍には1991年皐月賞、東京優駿（日本ダービー）、1992年ジャパンカップ、1993年有馬記念があります。彼は父の異名「皇帝」にちなんで名付けられました。彼は幾度もの骨折から復活の勝利を挙げた競走生活から「奇跡の名馬」とも言われます。本記事では、トウカイテイオーの生い立ちや競走生活、種牡馬としての活躍などをお伝えします。さあ、奇跡の名馬トウカイテイオーの物語をどうぞお楽しみください。
競走馬としての出世
デビューから皐月賞まで
トウカイテイオーは、シンボリルドルフという名馬を父に持ち、デビュー戦から絶大な期待が寄せられました。新馬戦では単勝オッズ2.6倍でスタートし、4馬身差で完勝しました。その後も連勝を続け、デビューから4連勝し、クラシック本番を迎えます。
父シンボリルドルフと同じく無敗のまま皐月賞に挑むトウカイテイオー。もちろんトウカイテイオーは1番人気に支持されました。不利とされる大外18番枠からスタートしました。レースではアフターミーが逃げる展開となりましたが、ピンクの帽子トウカイテイオーは大外枠出走ということもあり中団を走行。最後の直線で早めに先頭に立ち、シャコーグレイド（なんと16番人気！）の猛追を凌いで1馬身差で優勝しました。
日本ダービーと骨折
皐月賞を制したトウカイテイオーは、次なる目標として東京優駿（日本ダービー）に挑みました。ここでも圧倒的な支持を集め、単勝1.6倍の1番人気でした。レースでは前目8番手につけて第1コーナーを通過、先行策のまま最後の直線を向くと、そのまま横綱相撲。のちに菊花賞を勝つ2着レオダーバンに3馬身差をつけて快勝しました。東京競馬場に鳴り響く「ヤスダ」コールは感動的でしたね（鞍上は安田隆行騎手・現調教師）。これにより史上15頭目の二冠馬となりましたが、その後の診療で左後脚の骨折が判明し、休養と菊花賞の断念を余儀なくされました。
トウカイテイオーは無敵の二冠馬として評価され、1991年度のJRA賞年度代表馬に選出されました。しかし、骨折の治療とリハビリのために長期間の休養期間を必要としました。その間、ファンや関係者からの心配や悲鳴があがりましたが、彼の回復が待たれました。彼が復帰するのは翌年の産経大阪杯となります。
天皇賞春での対決と2度目の骨折
トウカイテイオーは鞍上を岡部幸雄騎手として復帰戦の産経大阪杯を快勝した後、天皇賞春への出走を表明します。天皇賞春は前年優勝のメジロマックイーン（鞍上は武豊騎手）が出走予定でした。鞍上同士の空中戦（岡部幸雄騎手「地の果てまで走れそう」に対し、武豊騎手の「（マックイーンは）それなら天まで上れそう」）もあり、世紀の対決と大変話題になりました。
トウカイテイオーは日本ダービーの2400mが経験距離としては最長であった一方で、メジロマックイーンは菊花賞や天皇賞春に勝っている稀代のステイヤーです。今冷静に考えるとメジロマックイーンが断然有利に思えるのですが、実際のオッズはトウカイテイオーが1番人気、メジロマックイーンは2番人気でした。結果としてはメジロマックイーンが優勝し天皇賞春を連覇。トウカイテイオーは5着に終わる結果でした。その後の検査により、トウカイテイオーに2度目の骨折が判明します。その春は全休、そして次走は天皇賞秋となりました。
国際舞台での活躍
ジャパンカップ優勝
骨折からの復帰後、天皇賞秋に出走したものの初めて掲示板を外す結果（レッツゴーターキンの7着）となりました。しかし予定通り同年秋最大の目標であった、トウカイテイオーは1992年にジャパンカップに出走しました。この年のジャパンカップは同年英ダービー優勝馬のドクターデヴィアス、英オークスや英セントレジャー勝ち馬のユーザーフレンドリーやコーフィールドカップ・メルボルンカップ勝ち馬のレッツイーロープなど海外の強豪がそろいました。
レースでは5番手あたりを追走、第4コーナーから直線に向いてからトウカイテイオーは粘るナチュラリズムを見事に差し切り優勝しました。ナチュラリズムへのムチの入れ方が尋常ではありませんでしたが、見事な切れ味の末脚により、トウカイテイオーはジャパンカップ史上初めて父子制覇を成し遂げました。日本調教馬がジャパンカップを優勝したのはカツラギエース、父シンボリルドルフに続いて3頭目となりますが、ジャパンカップが同年より国際G1競走となったため、日本調教馬として初めて国際G1競走に優勝したのは、実はこのトウカイテイオーとなるのでした（海外G1というくくりで言えば、1998年のシーキングザパールまで待つことになります）。
しかし優勝もつかの間、同年の有馬記念では11着に敗れ、その後調整を続けていましたが、1993年の宝塚記念出走直前に再び骨折する不幸がありました。
有馬記念優勝
3度目の骨折判明後、しばらくの休養ののち、同年の有馬記念で、前年（1992年）の有馬記念より約1年ぶり（364日ぶり）の出走となりました。鞍上は天才・田原成貴。ここまでの休養期間を空けてG1に勝利する馬はかつていませんでしたから、トウカイテイオーは4番人気に甘んじることとなります。1番人気はBNWの一角である菊花賞優勝馬のビワハヤヒデ、鞍上はかつての主戦騎手・岡部幸雄騎手でした。
レースはメジロパーマーが引っ張り、トウカイテイオーは8番手を追走、3コーナーあたりから徐々に順位を上げていき、最後の直線で粘る1番人気ビワハヤヒデを外から差し切り、見事優勝しました。3度の骨折からの復帰を果たし、有馬記念で優勝するのは奇跡と言っていいかもしれません。近年で長期間の休養を空けてG1に挑戦した有力馬で言えば、デアリングタクト（2020年無敗の三冠牝馬）が思い浮かばれます。実際彼女がヴィクトリアマイルに出走した時、長期間の休養明けでのG1勝利なるかということでトウカイテイオーが比較に出されていました。前走から364日の間隔が空いてのG1勝利という記録はいまだに破られていません。
トウカイテイオーは3度の骨折を経験しながら、力強い走りで何度も復活を遂げた姿が多くの人々に感動を与えました。
通算成績は12戦9勝で、父シンボリルドルフの七冠には及びませんでしたが、その戦績は十分に「帝王」の称号に恥じないものでした。その後、競走生活を引退し、後に種牡馬としても成功を収めました。
種牡馬としての成功
種牡馬としてのトウカイテイオー
競走生活を終えたトウカイテイオーは、種牡馬としてもその血を受け継ぐ優秀な産駒を送り出しました。後述の通りG1馬を3頭も輩出したことは、種牡馬としては大変な功績です。彼の産駒の中にはG1勝利馬や重賞勝ち馬が数多くいましたが、後継種牡馬を残すことができませんでした。
しかしながら、有志によるクラウドファンディングにより、クワイトファインが種牡馬入りすることが叶い、トウカイテイオーの直系父系は現在も継続できています。これはヘロド系の種牡馬が日本で継続できていることを意味しています（メジロマックイーン直系のギンザグリングラスと合わせて2頭のみ）。ヘロド系は世界的に見ても零細血統となってきており、クワイトファインの種牡馬入りはこの観点からも大変意義のあることだと思います。
トウカイテイオー産駒たちの活躍
トウカイテイオーは3頭のG1馬を輩出しました。例えば、マイルチャンピオンシップを優勝し、香港マイルでも3着となったトウカイポイント。そして阪神ジュベナイルフィリーズを勝ったヤマニンシュクル、かしわ記念優勝馬のストロングブラッドです。
母の父としてはオーストラリアに移籍したブレイブスマッシュ（フューチュリティステークスやマニカトステークスを勝利）や、最近では2023年のセントライト記念を勝ったレーベンスティールがいます。レーベンスティールは2023年の香港国際競走に遠征しますので、トウカイテイオーの名を世界に轟かせてほしいところですね。
トウカイテイオーを彩るエピソード
ウマ娘としてのトウカイテイオーの誕生
トウカイテイオーは、現在ではウマ娘としても人気を博しています。彼女は明るく活発な性格で、勝負の場でもその情熱を発揮し、多くのファンを魅了しています。彼女の「テイオーステップ」と呼ばれる独特の歩様や、鹿毛のロングヘアーをポニーテールにまとめた可愛らしい容姿も人気の要因です。「はちみーはちみー」と歌っている彼女も大変かわいらしく魅力的ですよね。
ウマ娘プリティーダービーSeason2では、トウカイテイオーはライバル・メジロマックイーンとの戦いと成長が物語の中心となります。スペシャルウィークやスピカのメンバーと仲良くトレーニングや合宿をするなど、彼女は主人公として物語を動かしていきます。そして会長・シンボリルドルフと同じ無敗の三冠ウマ娘になるために、同期のナイスネイチャやツインターボたち、そして最大のライバルであるメジロマックイーンと対峙していくのです。
トウカイテイオーの物語を綴った本
今まで見てきました通り、トウカイテイオーの栄光と挫折に満ちた物語は、彼を取り巻く人々や競馬ファンによって語り継がれています。「トウカイテイオー伝説」は彼のエピソードを集めた一冊で、彼の帰還や英雄の旅、名勝負ドキュメント や同時代のライバルや一族の名馬たち、そして彼を語る座談会などが記載されています。
さらに、本書にはトウカイテイオーの年譜や生涯成績も掲載されています。彼の美しい流星と静かな瞳を持つ不屈の名馬の物語は、競馬ファンはもちろん、その他のスポーツファンや一般読者にも十分に楽しめるものとなっています。
トウカイテイオーは漫画にもなっており、優駿たちの蹄跡というシリーズはAmazonアンリミテッド会員なら0円で読めますので是非読んでみてください。トウカイテイオーと田原成貴騎手の1993年の有馬記念が漫画化されていて、初めて読んだときはとても感動しました（泣きました）。トウカイテイオーだけでなく、テンポイントなどの数々の名馬に関する逸話が読めます。個人的には1977年の皐月賞馬・ハードバージ（鞍上は「天才」福永洋一騎手。今見てもあの皐月賞はすごい騎乗でしたね）の回が本当に切なくて涙なしには読めない回でした。あれ以来ウイニングポストでもハードバージを何とか所有して自己所有種牡馬にして、余生を全うさせてあげています。
まとめ
競走馬トウカイテイオーは、「帝王」の名に恥じない多くの栄光を持っています。彼の競走生活での優勝だけでなく、無敗の二冠、国際G1での勝利、そして種牡馬としての成功が彼の名声をさらに高めました。また、ウマ娘としての競馬界を盛り上げる活躍も見逃せません。幾度もの骨折から立ち上がり、不屈の精神性で勝利を目指し続けたトウカイテイオー。彼の奇跡の物語やエピソードには、勇気や感動を与える力があると確信しています。これからも「帝王」トウカイテイオーの名は、競馬界で語り継がれることでしょう。
