はじめに
凱旋門賞は、フランスのパリロンシャン競馬場で毎年10月の第1日曜日に開催される競馬の重賞競走であり、距離は芝2400mです。この競走は、1920年に第一次世界大戦後に衰退したフランス競馬再興を掲げて誕生しました。ヨーロッパ最大の競走の一つであり、国際的にも著名なスポーツイベントです。この記事では、凱旋門賞の歴史、その特徴、そして日本人ホースマンがどのように関与しているかについて詳しく解説していきます。
凱旋門賞の歴史
創設初期
1857年に創設されたロンシャン競馬場が舞台として選ばれました。このレースは、3歳以上牡馬牝馬のみが参戦でき、騙馬(気性が荒いなどの原因で去勢された牡馬)は出走できません。フランス産馬が名馬産地のイギリス産馬に勝利するという目的で創設された、芝2400メートルの国際競走で、約17万フランの巨額の賞金が提供されました。第一次世界大戦直後とあって、この目的は当時の世相を反映していると言えます。しかし、第1回の凱旋門賞は、第一次世界大戦直後とあって、外国からの出走がわずか2頭(イギリスとスペインから各1頭)と多くは集まれず、イギリスからの遠征馬カムラッド(Comrade)が勝ちました。カムラッドは同年のパリ大賞にも勝利しています。
ヨーロッパ最大の競走への変遷
第二次世界大戦中のドイツ占領下でロンシャン競馬場が空爆を受けるなどの被害を受けつつも、凱旋門賞は開催されました(ロンシャン競馬場から一時的に開催場を変更になったこともありました)。
第二次世界大戦後は馬産家であるマルセル・ブサックなどの影響を受けながら、賞金を当初より増額することで、ヨーロッパ各地の活躍馬が一堂に会する長距離のチャンピオン決定戦となりました。これで凱旋門賞は国際的にも著名なスポーツイベントに成長したといえます。大戦直後ではフェデリコ・テシオが遺したリボーなどが活躍しました。現在では凱旋門賞ウィークにはロンシャン競馬場は華やかな装いの紳士淑女が多く来場し、花の都パリの中でも一大イベントとなっています。
凱旋門賞の特徴
競走の舞台・パリロンシャン競馬場
凱旋門賞はパリロンシャン競馬場で行われるレースで、大コースを舞台にしています。レースは右回りで行われ、大(2750m)、中(2500m)、小(2150m)の周回コースのほか、新コース(1400m)や直線コース(1000m)の計5つのコースがあります。
スタート地点はグランドスタンドから見て左手奥の風車前に置かれています。向正面の直線約1000mでは、400mを通過する辺りから10mの勾配を駆け上がり、すぐに下りのコーナーセクションへと移ります。この競馬場はその坂が特徴であり、馬が無駄な動きをすると終盤のスタミナロスに影響する可能性があります。
戦術や馬場対策が求められるレース
凱旋門賞では、「偽りの直線」フォルスストレートの終わりに差し掛かると、各馬がラストスパートに備えて進出を開始し、馬群の中から進路を確保していくのがセオリーです。最後の直線は坂はなく平坦で、十分な長さがあります。
このような馬場条件や戦術が求められる凱旋門賞では、優れた瞬発力だけでなく、持続力やスタミナ、ジョッキーの判断力、そして馬場対策がクリアできるかが勝敗を分ける要素となります。10月上旬のパリは天候が不安定になりやすく、開催直前にならなければ馬場の状態が分からないほどです。2023年は晴れて良馬場でしたが、2021年・2022年はともに重い馬場での開催でした(グリーンチャンネルで現地レポートをしていた合田直弘さんがとても寒そうにしていたのが印象的でした)。
過去にも多くの名馬がこの競走に挑戦し、勝利や偉業を達成してきましたが、同時に参戦すること自体がリスクや経費を伴うため、慎重な対応が不可欠です。
日本人ホースマンと凱旋門賞
日本馬の参戦と成績
凱旋門賞は日本でも非常に知名度や人気が高く、日本国内で最上級の活躍をした競走馬が参戦しています。過去には、1969年に日本馬として初めて遠征したスピードシンボリがいました。そして時を経て、エルコンドルパサー(モンジューの2着)やディープインパクト(3着入線後失格。勝ち馬はレイルリンク)、オルフェーヴル(2012年ソレミアの2着、2013年はトレヴの2着)などが凱旋門賞を制覇しようと挑戦し、その活躍は日本の競馬ファンを沸かせました。2023年には宝塚記念2着のスルーセブンシーズが挑戦し、4着という結果となっています。
しかし、日本馬が凱旋門賞で勝利することは現在もなかなか実現しておらず、過去の挑戦がより一層日本馬に対する期待を高めています。いずれ日本馬が凱旋門賞を勝つ日がきっと来ると思います。それが誰の子になるのでしょうか。とても楽しみです。
まとめ
凱旋門賞は、その歴史、特徴、日本人ホースマンの挑戦を通じて、国際的に著名な競馬イベントとなっています。また、日本馬の凱旋門賞挑戦に対する期待や成果が積み重ねられることで、日本の競馬界にとっても大きな意味があります。今後も、日本馬や日本人ホースマンの凱旋門賞挑戦に注目していきましょう。